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日本で上映されるアジア映画はおまかせ
紀平 重成
コラムニスト(元毎日新聞記者)
走れロム
21/7/9(金)
ヒューマントラストシネマ渋谷
いまにも崩れ落ちそうな古い集合住宅が立ち並ぶベトナムのサイゴン(ホー・チミン)で闇くじを売り歩いて両親を捜す資金を稼いでいる孤児のロム。くじはなかなか当たらないため顧客から苦情を訴えられたりライバル業者との競争も激化し狭い路地裏を駆け巡る毎日です。そんな少年らを疾走感あふれるスタイリッシュな映像でとらえた本作は、当局の検閲に引っかかり一部手直しをしたことが話題になり人気外国作品を抑えて大ヒットしました。 経済発展著しいベトナムでは都市開発真っ盛り。立ち退きを迫られているのに補償が十分ではないため住民はよそに移ることもできません。問題解決には闇くじしかないと考える人が出るのも当然でしょう。その敏感な問題に触れたのが本作品です。当局は見逃してはくれませんでした。もちろん言われた通りの手直しもありますが、独自の判断で余韻を持たせることにも成功しています。 ベトナムと言えば反戦運動のシンボルとして世界から注視された国。人材の厚さに裏打ちされた交渉上手には定評があり、本作のチャン・タン・フイ監督ら新鋭が加わっての映画作りには大いに期待が持てそうです。今年の大阪アジアン映画祭特別招待作品。
21/6/14(月)