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演劇鑑賞年300本の目利き

大島 幸久

演劇ジャーナリスト

『ムサシ』

「遅いぞ、武蔵」と、佐々木小次郎。「この勝負、おぬしの負けと決まった」と、宮本武蔵。小次郎は愛刀の物干し竿、武蔵は木刀だ。幕開け、「巌流島の決闘」場面から胸が高まる。こちらも井上ひさし氏の作『MUSASHI (ムサシ)』は3年ぶりの上演である。オリジナル演出の“世界のニナガワ”、蜷川幸雄氏が亡くなったのは2016年5月12日、80歳。七回忌を前に「蜷川幸雄追悼公演」と銘打った。 能狂いの柳生宗矩を演じる吉田鋼太郎は前回2018年に続き演出を兼ねる。武蔵の藤原竜也、小次郎の溝端淳平、筆屋乙女の鈴木杏、そして物語の舞台である鎌倉宝蓮寺の大檀那・木屋まいの白石加代子は蜷川氏にしごかれた愛弟子たち。2009年の初以来、4回の公演を打ってきたが、英米での海外公演でも高い評価を受けている。 激闘から6年後。何と生きていた小次郎が再度の対決を挑むという物語展開。スピーディで迫力十分の決闘場面はもちろんだが、二人三脚ならぬ俳優5人が片足を縛られて動く、というか踊る芝居は笑える。負の鎖は断ち切らねばならない。難しいことをやさしく、そして痛快に――。井上戯曲の真髄を見よう。

21/8/17(火)

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