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水先案内人のおすすめ

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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

護られなかった者たちへ

原作小説とはだいぶ異なるところを含め、雰囲気が『砂の器』に似ている。 連続殺人事件を、刑事が捜査していくミステリだが、刑事も犯人らしき人物も、東日本大震災の被災者で、悔しさや怒りやせつなさを抱えている。 それだけでも重いが、震災は背景に過ぎず、「生活保護」が事件の核心にある。 ニュースなどで生活保護が話題になるのは、不正受給が多いとか、そういう制度も知らずに困窮している人がいるとかだ。つまり、必要としている人に届かず、必要ではない人がもらっているという両極端な話題になる。この映画でもそういうエピソードが描かれ、生活保護制度はこれでいのかと考えさせられる部分が重い。 残虐で猟奇的な連続殺人事件なのだが、最後に明らかになる犯人への怒りは、感じない。むしろ同情というか共感を抱いてしまう。といって、殺された被害者も「悪」とは言い切れない。 割り切れなさが残るが、世の中は単純には割り切れないのだから、それでいいのだ。

21/9/19(日)

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