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映画から自分の心を探る学びを
伊藤 さとり
映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)
Our Friend/アワー・フレンド
21/10/15(金)
新宿ピカデリー
家族の命の物語は、涙無しには語れないものがほとんど。けれど、本作は不思議と幸せな気持ちに包まれる魔法を持っています。 その理由は、感情のまま素直に生きようとした夫婦と一人の友人との人生をフラッシュバックさせながら、子供たちの成長を見守る愛や、子供へ注がれる親や仲間からの愛だったり、親を抱きしめる子供たちからの愛や、夫婦の愛、そして友との愛が、音楽から部屋の美術から様々なシーンから溢れてくるから。 さらにケイシー・アフレック扮する必死に立ち向かおうとする夫と、ダコタ・ジョンソン演じる感情表現が豊かな愛すべき妻の間で、彼らの家族のように関わるジェイソン・シーゲル演じる友人の大きな愛が全体を包み込む構成が、あたたかい空気を映画に与えています。 しかもガブリエラ・カウパースウェイト監督が、今までドキュメンタリーを撮ってきたからか、臨場感あるカメラと時間を行き来するような編集が、人生を回想する主人公の思いと寄り添いながら映画を見届ける感覚を持たせてくれます。 よく目を凝らせば愛はどこにでもあり、人生は寂しくないとそっと囁いてくれる、そんな優しい映画です。
21/10/4(月)