さまざまなオブジェが、会場に所狭しと並んでいる。ひとつひとつが存在感たっぷりの立体作品に見えるけれど、それらはじつは「かげ」のようなもので、本体は別にあるのだとのこと。いったいどこに? 会場奥の壁に設置されたモニターに映し出された映像、それこそが作品本体にあたるという。
平田尚也は、PCの仮想空間内に彫刻作品を置き、独自の空間をつくり上げている。彫刻の素材は、インターネット空間で収集した既成の3Dモデルや画像。ネット上で拾い集めたモノを寄せ集めて、仮想空間に独自の世界を築いてしまったわけだ。
平田の築いた世界ではいろんなモノが動き回っているのだけれど、それらの落下のしかたや跳ね返り方がいちいち珍妙である。重力のあり方からして、私たちが住むこの世とはまるで違うらしい。これは、あり得たかもしれない別バージョンの世界だ。しばらく覗き込んでいると、自分の立っている足元が崩れ落ちていくような、危うい気分に襲われてしまう。