モーリタニアン 黒塗りの記録
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9.11の首謀者の容疑でグアンタナモ収容所に長期間拘禁され、2015年検閲により多くが黒く塗りつぶされた手記を発表してベストセラーになったモハメドゥ・スラヒ。この手記を読んだベネディクト・カンバーバッチが強く映画化を希望し、この9.11後の硬直した米国が生み出した惨劇を冷徹に描いた映画の製作が実現した(カンバーバッチは起訴を担当する米軍中佐として出演もしている)。
スラヒ役のタハール・ラヒムとスラヒの弁護を引き受ける弁護士、ナンシーを演じたジョディ・フォスターが素晴らしい。本当はもう少し穏健なものだったスラヒとナンシーの関係を、フォスターの助言により、よりタフなものにしたという。
グアンタナモ収容所をテーマにした作品は他にマイケル・ウィンターボトム監督の『グアンタナモ、僕達が見た真実』もあるが、ともに英国人の手によるものである(本作の監督はケヴィン・マクドナルド)。アメリカでは未だにこのテーマの映画は製作されていないことを考えると闇の深さを感じさせるが、ラストのスラヒ本人の笑顔が希望を感じさせてくれもするのだ。