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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介
堀 晃和
ライター(元産経新聞)、編集者
ONODA 一万夜を越えて
21/10/8(金)
TOHOシネマズ 日比谷
1974年3月、小野田寛郎さんが51歳で日本に帰って来た時の映像は今も頭に焼き付いている。子供の眼には、鋭い眼光が怖く映った。自分の周囲に、あのような厳しい顔つきの大人はいなかった。それから40年近く経って、挨拶する機会に恵まれた。2014年1月に91歳で亡くなるが、たしかその1~2年前だった。柔和な表情、高齢を感じさせないしっかりした立ち居振る舞いが印象に残っている。 終戦後もフィリピン・ルバング島に留まり、約30年間の孤独な日々を送った実話をもとに描いたのが本作だ。あの「眼光」が形成されていく過程が、過酷な自然を背景に描かれる。 小野田は1944年、陸軍中野学校二俣分校で特殊訓練を受け、ルバング島に派遣される。任務はゲリラ戦の指揮。密林で行動していた小野田らは終戦を信じず、潜伏を続けた。 島民との戦闘、飢え、風雨、斃れていく仲間……。一瞬も気が抜けない日常を生きる小野田の姿を通して浮かび上がるのは「人生」への問いかけだ。いったい何のために戦い続けているのか。戦争に翻弄された一人の人間の生き抜く姿から、様々なメッセージが観る者の胸に迫ってくる。 小野田の壮年期を演じた津田寛治の顔に惹かれた。あの「眼光」が確かに見える。
21/10/9(土)