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アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

信虎

俳優で観たくなる映画がある。『信虎』で主人公の武田信虎を演じるのは名優・寺田農。36年ぶりの主演作という。これは観るしかない。 信虎は戦国時代に“最強の武将”とも言われた武田信玄の父親。甲斐の国主だったが、四十半ばで信玄に追放された。物語はその約30年後、京の都で足利将軍に仕える信虎が信玄の危篤を知り、国に戻ろうとするところから動き出す。困難の末に帰ったが……。 大軍が対峙するような派手な合戦シーンはない。ドキドキするのは、激動の世を生き抜くために様々な思惑が錯綜する人間模様が描かれる点だ。復権を夢見る信虎は、当主に就いた孫の勝頼や重臣らに野望を阻まれる。苛烈な人生を歩みながらも、どこか余裕で滑稽味のある信虎。その複雑な個性を、寺田が円熟の演技で表現している。豊かな表情に注目してほしい。 黒澤明や今村昌平の作品など数々の映画音楽を手掛けてきた巨匠・池辺晋一郎の重層でやわらかな旋律が、信虎の生涯の陰影を一層強くしている。 出演者は、永島敏行、渡辺裕之、榎木孝明、谷村美月ら豪華俳優陣が揃った。家老を演じた隆大介(2021年4月死去)は遺作となった。エンドマークの後も再びその俳優たちに逢いたくて観返したくなる。

21/10/24(日)

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