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春日 太一

映画史・時代劇研究家

スティール・レイン

ぶったまげた。韓国の潜水艦映画なのだが、設定も描写も展開もとにかく吹っ切れまくっていて「そんなアホな!」とアングリし続けているうちに怒涛の勢いで時間が過ぎていく。 核放棄に向けて南北朝鮮の首脳とトランプ風の米大統領が北朝鮮にて会談する最中、北朝鮮でクーデターが起きて軍部が三首脳を原子力潜水艦に拉致。その黒幕が日本の極右団体で、そのトップを演じるのが白竜。 潜水艦では三首脳がドタバタ喜劇やっているうちに熱い友情が芽生えるという展開に驚かされるし、クライマックスは竹島海域で北朝鮮の潜水艦と自衛隊の激戦。ひたすらカオスまみれ。 いろいろ設定や展開に粗があるし、とにかく何から何まで混沌としているので話がどこに向かうか分からない。それでも、ふざけた映画と思いきや面白おかしく観ているうちに潜水艦内のドラマはどんどん盛り上がり、ぐいぐい引き込まれていった。 台湾や尖閣諸島まで絡めた米中の対立や両国の間に立たされる日本も加わる、デリケートな国際情勢。それを次々と盛り込むだけ盛り込んでおきながら、お気楽な娯楽映画に仕上げている。そんなところにも、韓国映画の勢いを感じることができた。

21/12/3(金)

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