水先案内人のおすすめ

評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!

アニメも含め時代を象徴する映画を紹介

堀 晃和

ライター(元産経新聞)、編集者

ハウス・オブ・グッチ

「グッチ」といえば、海外高級ブランドの代名詞のような存在だ。日本でも、かつて銀座にあったセレクトショップが1960年代から紹介し、今も絶大な人気を誇っている。 華やかな老舗ブランドにも長い歴史の中で影があった。その暗部に大胆に切り込んだのが本作。実話に着想を得たと但し書きがあるように、1995年に起きた殺人事件など実際の騒動をなぞりながら、巨匠リドリー・スコット監督が当時のグッチ家の人々の内面を緻密に描き出した。サスペンスタッチの大作だ。 1978年、イタリア・ミラノ。パトリツィア(レディー・ガガ)は、パーティーでグッチ創業者の孫のマウリツィオ(アダム・ドライバー)に出会う。財産目当てを警戒したマウリツィオの父の反対にあいながらも結婚にこぎつけると、次第に家業に口を出すようになっていく。 カメラは、創業者一族による“ブランド帝国”が崩壊していく様子を背景に、複雑に絡み合う人物模様を克明に浮かび上がらせた。演じる俳優たちが魅力的だ。中でもレディー・ガガに刺激を受けた。無邪気さが残る20代半ばから野心に満ちた40代までを見事に演じ分けている。大スター、アル・パチーノの存在感も、本作を輝かせている大きな理由のひとつだ。

21/12/12(日)

アプリで読む