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監督、俳優…新しい日本の才能に注目(2018年6月〜2022年12月まで担当)
野村 正昭
映画評論家
世界で一番美しい少年
21/12/17(金)
ヒューマントラストシネマ渋谷
『ミッドサマー』(19) を観て、儀式のために断崖から飛び降りる老人ダン役をビョルン・アンデレセンが演じていると知ったときには仰天した。ビョルン・アンドレセンって、あの『ベニスに死す』(71) の美少年タジオでしょ。約50年後の今、歳月の酷さをこれほど思い知らされたことはない。半世紀もの間いったい彼の人生に何があったのか。 波乱に富んだ人生を、この映画はその幼年時代からはじめる。父親は誰だか分からず、母親は家を出て自殺し、育ててくれた祖母は孫を有名にするために売り出すことに懸命だった。『ベニスに死す』のオーディションの撮影中の記録映像は、メイキング登場以前では貴重なものだ。来日し、テレビのCMや歌を吹きこむ一方、20代で結婚するも、幼い息子を亡くす悲劇にも見舞われた人生には、よくも悪くも“美貌”が影を落としていることが分かる。
21/12/10(金)