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「これは絶対に観逃してほしくない!」という“埋もらせ厳禁”な映画を紹介します
LiLiCo
タレント、映画コメンテーター
なれのはて
21/12/18(土)
K's cinema
フィリピン、マニラにあるスラムでひっそり暮らす日本の高齢男性たちをとらえた実話です。 さまざまなドキュメンタリー映画がありますが、人生の悲喜こもごもを描くもので、この作品を越えるものは観たことがありません。生活に困窮してもなお、帰国せずにスラム暮らしを続ける彼らは、わずかな日銭を稼ぎながらほそぼそと暮らしていますが、それぞれの過去は波乱万丈。日本に家族を残している人もいます。 しかも、日銭を稼ぐのも楽じゃなく、屋台を始めようと準備するも屋台ごと盗まれてしまったり。それでも彼らから笑顔が消えることはなく、スラムに暮らす近隣の人たちも、よくも悪くも大雑把。だからこそ彼らはそこで生きられるんでしょう。それを恵まれない人生というのは簡単ですが、そんな単純な話じゃないことは、この作品を観れば分かるはずです。 なにより、彼らに7年間寄り添って撮影を続けた監督がすごい。監督の前で彼らが正直にすべてをさらけだすようになるまで、おそらく大変な思いをしたでしょうが、最終的には全てを捨てた彼らには、日本との最後の縁になります。 これを観て、私は自分のホームレス時代を思い出してしまいました。もちろんつらいことはたくさんあったけど、当時も「笑うことをやめたらダメになる」と思っていました。それがこの作品に出てくる人々全員に見られること。生きていることこそ喜び、というのが分かっていただけると思います。
21/12/30(木)