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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

ハウス・オブ・グッチ

名門ブランド、グッチの創業家の実話の映画化。 グッチはイタリアのフィレンツェが発祥の地で、1970年代後半、創業者の子2人が経営を担っている。創業者の子である兄と弟、それぞれの息子たち、そして次男の息子の妻の5人で構成される華麗なる一族の、愛と憎しみと野心のドラマは、殺人事件を生んでしまう。 主役は弟の息子とその妻で、アダム・ドライバーとレディ・ガガが扮する。兄がアル・パチーノ、弟がジェレミー・アイアンズ。 イタリアの一族の物語でアル・パチーノが出てくるとあれば、『ゴッドファーザー』を思い出してしまう。しかし『ゴッドファーザー』では常に勝利するアル・パチーノが、この映画では「若僧」と「小娘」にしてやれてしまう。 アダム・ドライバーは『スター・ウォーズ』同様に父との関係がうまく築けない、内向的な息子。 つまりグッチ版「ゴッドファーザー&スター・ウォーズ」なのだ。 家族をめぐる物語なだけに、過去のさまざまなファミリーもの映画を想起させるが、親と子、兄と弟の関係には、ある種の普遍性があるということか。そんな神話的構造を持つ一族が、20世紀には実在したのだ。 この父と子・兄と弟のドラマに、レディ・ガガによる女の野望と愛と裏切りが絡み、思わぬ展開が待つ。これが実話というのだから、まさに事実は小説よりも奇なり。 実在する家族に起きた、現実の事件を描いているので、観る前から結末を知っている方も多いだろうが、知っていても楽しめる。 「グッチ」ブランドのさまざまなエピソードも随所にあり、ファッション映画の魅力も充分。

22/1/4(火)

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