地獄だ。“地獄のような”ではなく、地獄そのものとしか思えない世界が映し出されている。 舞台となるのは、聴覚障がい者たちの学校。 そこではスクールバスの車内で公然と男子生徒たちによる女子生徒への集団レイプが行われていた。皆が聴覚に障がいがあるため、誰も何も聞こえない。大人たちは事なかれ主義で頼りにならない。 それでも被害少女は表向き何事も無かったかのようにその後も加害生徒たちと接する。この学校を追い出されてしまうと、今度は“外の世界”で健常者たちによる過酷な差別が待ち受けていることを知っているから。 一方の加害者たちは男女関係なく、レイプを目撃した少年を標的にする。少年を守るため、少女は「一緒に私をいじめていい」とさえ言い放つ。少年は理解ある教師を頼りに、闘う決意をする。だが、この一件はこの学校の“地獄”の氷山の一角に過ぎないことが明らかに……。 爽やかな映像に反して、描写はかなりえぐい。見るからに純粋無垢な少年少女たちが酷い目に遭い続ける様は、とにかくきつい。そして、好きな女の子を守りたいという少年の想いがさらなる地獄の蓋を開ける。しかも、そんな地獄の方が“外”よりもまだマシだというのだから救いがない。 生徒たちを演じる俳優たちが誰も見事で、地獄の底で苦しみ悶える鬱屈が生々しくも痛切に訴えかけてくる。 かなりえぐられる内容だが、是非とも受け止めてほしい。

22/1/14(金)