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ドキュメンタリー評論のエキスパート
村山 匡一郎
映画評論家
名付けようのない踊り
22/1/28(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
“場踊り”という独特な即興的踊りで知られるダンサー、田中泯。今年で77歳になる彼のダンス人生を、2017年から2年間、ポルトガルやフランス、また東京や福島などで踊る姿を中心に、犬童一心監督が描いたドキュメンタリーだ。田中泯自身がこれまで綴った言葉を重ねる一方、アニメーション作家の山村浩二が少年時代の田中泯に刻まれた風景を点描していく。山梨の自宅での野良仕事で身体を作り踊るという信念から生み出された“場踊り”が国内外で披露される様子は興味深く、フランスの観客の質問に答えて、踊りはダンサーと観客が一緒に作り上げるものだという彼の言葉は刺激的だ。ダンスを対象とした映像は往々にして付随的になりがちだが、ここでは両者が拮抗した世界を作っていて面白い。
22/1/24(月)