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細谷 美香
映画ライター
再会の奈良
22/2/4(金)
シネスイッチ銀座
国際映画祭の常連である河瀬直美とジャ・ジャンクーがエグゼクティブプロデューサーとして名を連ね、脚本と監督を務めたのはツァイ・ミンリャンのもとで経験を積んだという中国人監督、ポンフェイ。アジアの才能が集まったこの作品は、中国残留孤児を題材にしながら、大きく声をあげるのではなく、小さな日常の営みを見つめることで歴史に翻弄された人たちの悲しみを浮き彫りにしています。 じんわりと心に染みるのは、かつて育てた残留孤児の養女を探しに中国から日本へとやって来たおばあちゃんを演じるウー・イエンシューの名演。精肉店ではメェ〜っと鳴き真似をして店員とコミュニケーションをはかり、食卓に並ぶはずのカニに情けをかけ、養女からの手紙の束を手にあきらめることなく奈良の田舎町を歩く。どこかおおらかなおかしみを漂わせる彼女の存在が、境界線を超えていく“親子”の物語のトーンを決定づけています。
22/2/6(日)