ジャズシンガーとして大成功を収めたにもかかわらず、悲劇的な人生を送ったビリー・ホリディ。映画ファン的にはダイアナ・ロスが彼女を熱演した『ビリー・ホリディ物語　奇妙な果実』（72）が知られているが、今回はそれとは異なる視点で彼女の人生に肉薄する。タイトル通り「合衆国VSビリー・ホリディ」の闘いのドラマだ。 彼女の持ち歌のひとつ「奇妙な果実」を絶対に唄わせたくない政府と、それを唄わなければいけない彼女の長年に亘る確執を描いている。では「奇妙な果実」とはどんな歌なのか？　紆余曲折を経てやっと彼女が歌い出したときに明らかになるその驚くべき歌詞。タメの効いた演出、演じるアンドラ・デイの熱唱も手伝って、たとえ歌詞や内容を知っていたとしても衝撃的だ。最初に「肉薄」と書いたのは、このデイの演技。文字通りビリー・ホリディに「肉薄」していると思った。

22/2/16(水)