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ドキュメンタリー評論のエキスパート
村山 匡一郎
映画評論家
国境の夜想曲
22/2/11(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
『海は燃えている』のジャンフランコ・ロージ監督の新作ドキュメンタリーだ。監督は3年ほど、イスラム国との戦いやシリア内戦など紛争の絶えない中近東をひとりで旅して撮影。息子を拷問で殺害された老婆が廃墟と化した建物で嘆く姿、クルド人部隊「ペシュメルガ」の女性兵士たちの活動、あるいは精神病棟の患者たちによる演劇の稽古、イスラム国に囚われた子供たちの悲惨な思い出など、監督が出会った人々の姿を点描的に描き出していく。ナレーションや音楽はなく、場所などの情報も一切ないため、一種の映像詩に近い世界が展開するが、戦火の絶えない過酷な現実から醸し出される緊張感を漂わせながら、紛争地でたくましく生きる人々の姿が浮かび上がってくる。映像が美しいゆえに悲痛で残酷でもある。
22/2/19(土)