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日本で上映されるアジア映画はおまかせ

紀平 重成

コラムニスト(元毎日新聞記者)

ある職場

実在のセクシャル・ハラスメント事件を基に、その後日談として創作されたフィクション。監督は『フタバから遠く離れて』などドキュメンタリーも手がける舩橋淳と聞けば、舞台設定のみを与えられた俳優たちが即興に近い演技でリアルな会話を繰り広げ、時には言いよどむ場面さえもその現場に立ち会って見聞きしているように感じるでしょう。 次のような展開です。ホテルチェーンに勤める大庭早紀は、密室で上司からセクハラを受けます。事件はホテル以外にも知れ渡り、SNS上で炎上。同僚たちは職場の暗い雰囲気を変えようと、大庭を誘い湘南の社員用保養所に集合します。参加者は彼女を励まそうとするのですが、SNS上でバッシングをしている人のアカウントは同じ職場である可能性が浮かび上がり、疑心暗鬼に陥った彼らは、互いに腹を探り合います。 人間は追い詰められたりすると考えられない行動をとります。孤立する被害者のために集まった同僚から「甘えているよ」「自分の方から誘ったんじゃないの」とまで言われたり、ことを穏便にもみ消したいという保守意識から女性上司による「あたしだってセクハラなんてたくさん受けて来た。だからこの男社会を変えてやるって頑張ってるんじゃないの」と思いもかけない本音まで飛び出します。 監督の本意はどこにあったのでしょうか。国連によるジェンダー平等ランキングで世界120位に低迷している日本の現状を変えるべく被害者救済システムの整備は当然求めていると思います。同時に人は弱いものだと各個人が自覚し自分の居場所で声をあげること、あるいは精神的に強くなることを願っているのではないでしょうか。

22/2/21(月)

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