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平辻 哲也
映画ジャーナリスト
親密な他人
22/3/5(土)
ユーロスペース
ハリウッドでは50代の女優が主演を張ることは珍しくもないが、日本では数が少ない。本作は昨年12月に50歳を迎えた黒沢あすかの主演作。聞けば、企画から映画化までの道のりも平坦ではなかったようだ。 監督が提案しても、会社やプロデューサーから「誰が、中年女の映画を観たがるのか」と蹴られてしまうそうだ。映画は若い観客だけではない。むしろ40代以上が観たいと思える作品は少ない。 同年代の女性監督・中村夕真とタッグを組んだ大人のためのスリラー。塚本晋也監督の『六月の蛇』、園子温監督の『冷たい熱帯魚』でエロスと狂気で強烈な印象を残してきた黒沢が裸を見せず、新境地を見せる。 母子でもない、恋人でもない、微妙な二人の関係の行方がスリリング。ささいな所作から妖しさ、エロスを漂わせ、「この愛の正体は何か」と観る者を惑わす。劇中にコロナ禍の生活を盛り込んだことで、人と人との距離感というテーマも浮かび上がっている。題名にもひねりが効いている。
22/2/26(土)