子供の頃からドイツで育った河村尚子さん。そのすっきりとした潔い音はドイツものによく合い、これまでもベートーヴェンのピアノソナタ全曲演奏会などで、その優れた音楽性を惜しみなく披露してくれました。 そんな彼女が今年取り組むのは、春と秋、全2回のシューベルト・プロジェクト。春の公演では、若くして円熟の境地に達した頃に書かれたピアノソナタ第18番D894「幻想」、死の2ヶ月前に手掛けられたソナタの一つであるピアノソナタ第19番D958に加え、シューベルトの歌とハーモニーが堪能できる小品が集められています。 河村さんの演奏は、その包容力のあるあたたかい音楽と迷いのないタッチのおかげか、聴き終えたときに特別な爽快感をもたらしてくれます。シューベルト若き晩年の暗さと明るさが複雑に絡み合う作品でも、特別な後味を経験させてくれるのではないかと、今から楽しみです。

22/3/16(水)