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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

やがて海へと届く

市井の人の機微を丁寧にすくい取り、光を巧みに取り入れた映像美に定評があるのが、中川龍太郎監督。彩瀬まる氏が東日本大震災という大きな背景に描いた同名小説の映画化は挑戦だっただろう。キャストも『愛がなんだ』の岸井ゆきの、東宝芸能のエース浜辺美波を起用し、最もメジャー感が出ている。 テーマは、大切な人を失った喪失感と再起。監督の得意分野。そこに、さらに心象風景を描くアニメも取り入れるという新たな表現も。そのせいか、「生身」感が強かったこれまでの作品に比べると、やや作り物感もあるが、岸井と浜辺のふれあうシーンには心を揺さぶられる。二人の距離が縮まっていくほど、その失ったものの大きさが際立つ。

22/3/23(水)

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