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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

潜水艦クルスクの生存者たち

15年前の2000年、当時としては最新式のロシア原子力潜水艦「クルスク」の艦内で爆発が起きた。艦と118人の乗組員が海底に沈み、95人は即死。残りの23人は船尾のコンパートメントに避難し、8時間生き延びた。この事故当日、プーチンは黒海のソチで休暇中だったが、報告を受けてもすぐにモスクワに戻らなかった。更にロシアが救出機能を持っていないことを知っているイギリスとノルウェーからの援助申し出も拒否、乗組員を見殺しにした。プーチンは今も昔も、人命尊重という概念がない男なのである。 乗艦員118名を乗せ、軍事演習のため出航した原子力潜水艦クルスク艦内で魚雷が突然暴発した。司令官ミハイル(マティアス・スーナールツ)は、爆発が起きた区画を封鎖、部下たちと安全な艦尾へ退避を始めるが、艦体は北極海の海底まで沈没。海中の異変を察知したイギリスの海軍准将デイビッド(コリン・ファース)は、ロシア政府へ救援の意志を伝えるが、沈没事故の原因は他国船との衝突にあると主張するロシアはこれを拒否。乗組員の生命よりも国家の威信を優先する政府の態度に、ミハイルの妻のターニャ(レア・セドゥ)を始めとする乗組員の家族たちは怒りをあらわに抗議する。 『U・ボート』や『レッド・オクトーバーを追え!』同様、潜水艦映画の佳作でありながら、どうも後味がスッキリしない。当然ながら、観ている間中、ウクライナ情勢が頭から離れなかったからでもあるが、主人公の妻ターニャの国に対する怒りがのり移ってしまったからだ。ロシアは何があっても変わらない。監督は『偽りなき者』(2012)やアカデミー賞国際長編映画賞を受賞した『アナザーラウンド』(2020)のトマス・ヴィンターベア。

22/3/19(土)

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