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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性

2012年に製作されたドキュメンタリー映画。 2011年に亡くなった、ハリウッドで最初のキャスティング・ディレクター、マリオン・ドハティの業績を振り返る。存命中の本人へのインタビューと、関係者の証言で描かれている。 キャスティング・ディレクターは、スター・脇役・大部屋俳優が撮影所の専属だった時代には必要がなかったが、そのシステムがなくなると、映画ごとに主役から端役までをキャスティングする専門職が必要となった。 その先駆けとなったのが、ドハティだった。 その関係者が豪華だ。名だたる監督とスターたちが、彼女に感謝し、その業績を讃える。 ジェームズ・ディーンに始まる舞台出身の俳優たちが、最初にテレビドラマに起用され、映画へ進出していく過程のすべてドハティがいた。そのスターたちは、ロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノ、ロバート・レッドフォード、クリント・イーストウッド、メル・ギブソン、ダスティン・ホフマンなど、錚々たる顔ぶれ。つまり、この映画はキャスティング・ディレクター誕生の記録であり、「スター誕生」のエピソード集でもある。 舞台出身者たちによって、1960年代以降のハリウッド映画が作られていたことが改めて分かる。美男美女スターから、演技派スターへの大転換には、ドハティという存在が必要だった。 それなのに、彼女が「キャスティング・ディレクター」としてクレジットされるまでには時間がかかり、アカデミー賞にもこの分野の賞はないことも、告発されている。 製作から10年たっての日本公開は、ありがたい。

22/3/22(火)

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