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監督、俳優…新しい日本の才能に注目(2018年6月〜2022年12月まで担当)

野村 正昭

映画評論家

私はヴァレンティナ

映画が始まってから、すぐにヒロインの受難を見せられ、唖然としていると、その状態が、どんどんエスカレート。17才のヴァレンティナは、出生届の名前であるラウルではなく、通称名で学校に通う手続きのため、蒸発した父親を探している。だが、パーティでは見知らぬ男に襲われ、それをきっかけにSNSでのネットいじめや、匿名の脅迫、暴力沙汰に巻き込まれていく。同性婚も認められているブラジルだが、トランスジェンダーの中途退学率は82%、平均寿命は35才という現実が、ヴァレンティナの運命を翻弄する。決して遠い他国の出来事として見過ごせないのは、コロナ禍の日本でも同調圧力が高まり、自分らしく生きるのを困難に感じるからだ。自身もトランスジェンダーであるヴァレンティナ役のティエッサ・ウィンバックの、どんな状態でも希望を失わない清々しい姿勢に胸をうたれる。

22/3/23(水)

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