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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性

映画作りの基礎である「撮影」の歴史を鳥瞰した『ビジョンズ・オブ・ライト 光の魔術師たち』 (92)、専門的な「編集技術」の発展や進化に迫った『カッティング・エッジ 映画編集のすべて』(04)、「音響創造」の奥深さを平易に綴った『ようこそ映画音響の世界へ』(19)は、映画理解への一助になる素晴らしいドキュメンタリーだった。 それらに連なる『キャスティング・ディレクター ハリウッドの顔を変えた女性』(監督トム・ドナヒュー)も意義と素晴らしさにおいてはその例外ではない。本作は、『俺たちに明日はない』『明日に向って撃て!』『真夜中のカーボーイ』『ダーティハリー』『スティング』など歴史的名作のキャスティングを担当したマリオン・ドハティ(1923-2011)という女性映画人の軌跡と功績を描いたドキュメンタリー映画。「キャスティング・ディレクター」がどんな仕事かは理解できなくても、列記した代表作の主演者たちの適役ぶりを思えばその才能の豊かさは納得できる。例えば『俺たちに明日はない』のウォーレン・ビーティ―とフェイ・ダナウェイ、『明日に向って撃て!』のロバート・レッドフォードとポール・ニューマンの起用は、これ以上は考えられない素晴らしいキャスティングだ。 キャスティング・ディレクターとは、俳優の才能を発掘し名演技を引き出す、映画の創造者。篇中でマーティン・スコセッシは「映画監督の仕事の9割はキャスティングの質で決まってしまう」、またグレン・クローズは「偉大な監督たちは優れたキャスティング・ディレクターに感謝している。リスクを恐れぬキャスティングのおかげで映画はさらに良くなるからだ」、とマリオンの仕事を称賛する。 その他、イーストウッド、デ・ニーロ、レッドフォード、パチーノらがマリオンのキャスティングの才能を絶賛。本作は、まさに「映画の見方が変わる」ドキュメンタリー映画なのだ。

22/3/27(日)

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