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日本で上映されるアジア映画はおまかせ

紀平 重成

コラムニスト(元毎日新聞記者)

メイド・イン・バングラデシュ

「差別されているか弱き女性」という使い古された描かれ方が今なお映画の中で繰り返されるのは、実際にそのような現実が改善されないまま残っているからです。バングラデシュの縫製工場が舞台の本作でも長時間労働の女性労働者らが低賃金に泣き苦情を言うと、逆に減給をちらつかされる有様。毎日一人で1650枚作るTシャツの最終的な売値が2、3枚で自分たちの月収に当たると聞いて女性従業員らが驚くシーンが印象的です。 格差社会という重いテーマを掲げながらヒットしたのは、女性を単なる犠牲者としてとらえるのではなく、知恵を絞り団結して交渉力を得ていくたくましさを併せ持つ存在として書いた脚本の良さを挙げることができるでしょう。実際、彼女たちならきっと何かをやってくれるだろうと期待させる面魂を持っています。 中でも主演のシム(リキタ・ナンディニ・シム)は組合結成運動の中心人物であることが発覚し活動をやめるよう会社から打診される役回り。その提案に乗れば組合結成の署名に応じた68人の仲間が職を失い家族も路頭に迷う恐れがあり、引くに引けない立場です。とっさに啖呵を切ったシムの荒業は組合結成許可申請の窓口に居座る男どもを震え上がらせます。さっそうと立ち去るシムに笑顔はありません。そう、本当の戦いはこれからです。

22/4/9(土)

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