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Tak

美術ブロガー

最後の印象派、二大巨匠 シダネルとマルタン展

長い美術の歴史の中でも、半世紀に渡り、友情で結ばれていた画家も珍しいのではないでしょうか。同時代に生きる画家はとかく、比較されライバル視されがちですが、今回の展覧会の主役であるふたりは、同時代の批評家たちからも一対の画家としてみなされていました。そんなふたりの画家の名は、アンリ・ル・シダネル(1862-1939)とアンリ・マルタン(1860-1943)。19世紀末から20世紀初頭のベル・エポックのフランスで活躍し、「最後の印象派」と呼ばれたシダネルとマルタンの日本国内初の二人展です。 印象派の登場で、美術史が大きく変動したことはよく知れれています。その流れは新印象主義や象徴主義へと目まぐるしく発展し、20世紀に入るとフォーヴィスム、キュビスムそして戦後の抽象表現主義へ発展していきました。前衛的絵画真っ盛りの只中にあり、シダネルとマルタンは抽象的絵画に走らず、ひたすら風景や人物など具象画に拘り光を表すことを亡くなるまで貫き通しました。 約70点のふたりの作品が時代順に並ぶ展示室には、とても穏やかでどこか懐かしい風が漂っているかのようです。深い友情で結ばれたふたりは、パリで修行を終えた後、シダネルは幼少期を過ごした北フランス、マルタンは生まれ故郷である南フランスの「光」を求め北と南に別れ、独自の風景画を描き続けました。1900年に新協会を設立、円熟期には共にフランス学士院会員に選出されるなど、当時のパリ画壇の中核にいたふたりでしたが、死後名前は急速に忘れられてしまいます。1980年代に入り、ヨーロッパでも見直しの機運が訪れ、近年では再びふたりの回顧展が開かれ現在に至ります。 あらためてふたりの作品を観ると、時代の流れに左右されずに、自分たちの信念を貫き通した力強さを感じることでしょう。印象派の末裔であるふたりが、描いた光と詩情に満ちた美しい作品を存分に味わえる展覧会です。最後に、シダネルからマルタンに宛てた手紙の一部を紹介しておきます。 「75歳を迎えても、悲観してはいけないよ。これまで幸運にも健康でありつづけたことに敬意を払うような年齢ではあるが、この年になっても、作品は、自ずから相変わらず湧き出てきている。一日を基盤にして、その一日をより優れた高揚で満たすすべを知っていることは、いまだにあなたの魅力なのだから。」

22/4/3(日)

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