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社会を映しだす映画をわかりやすく紹介
池上 彰
ジャーナリスト、名城大学教授
潜水艦クルスクの生存者たち
22/4/8(金)
kino cinema立川高島屋S.C.館
ウクライナ侵攻に動員されたロシア兵は、寒さの中で多くが凍傷にかかり、食料も水も補給が途絶えて、絶望的な状態が続いています。ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ロシアは戦死したロシア兵の遺体を収容しようともしない」と言っています。 体面だけを重んじ、平気でウソをつく。そんなロシア軍の体質が変わっていないことを、この映画は教えてくれます。 2000年8月、118人の乗組員を乗せたロシア海軍の原子力潜水艦「クルスク」は軍事演習に出航しますが、艦内で搭載していた魚雷が爆発。大破した艦は海底に沈みます。それでも生き残った乗組員たちは、創意工夫をしながら救助を待ちます。 ところが、当時のロシア海軍の救助態勢はお粗末で遅々として進みません。窮状を見たイギリス軍などが救出を申し出ますが、体面を重んじるロシア海軍は、事故の原因をNATOのせいにして、なかなか受け入れようとしません。救助を求める乗組員の家族は鎮静剤の注射を打たれて口封じされてしまうのです。 きっといまウクライナに取り残されているロシア兵のロシア国内にいる家族も同じような気持ちになっていることでしょう。実際にあった事故を再現した映画は、ロシア軍の体質を教えてくれます。
22/4/4(月)