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水先案内人のおすすめ

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ホラー、動物モノ、トンデモ映画を発掘

春錵 かつら

映画ライタ―

N号棟

ノストラダムスの予言が外れ、人類が何事もなく生き延びた2000年。拍子抜けした日々をやり過ごすオカルト民の心をときめかせた事件が、岐阜県のとある町で起きたのを覚えているだろうか。 「幽霊団地事件」──4階建ての公営団地で住民たちが立て続けにポルターガイストに悩まされたその事件は、新聞や週刊誌でも多く取り上げられ、私は毎日ニュースを追っていた。「電気コードを挿していないドライヤーが動いた」「食器棚から皿が飛び出した」「かってにシャワーから水が出始めた」…いくつもの世帯が不思議な現象を報告し、日本中から霊能者や霊媒師が名乗りを上げてお祓いに訪れた。 本作はこの幽霊団地事件をモチーフに製作されたホラーだ。自己中心的な若者が友人たちを取り返しのつかない恐怖に巻き込むという構図は既出の多くのホラーで見慣れてはいるものの、「団地」という日本特有の集合体を取り扱うのは新鮮だ。小さな集合体で共有される文化や慣習というのは不気味で、外部の人間が“お客様”である限りは許容しがたい異物である。2020年公開『ミッドサマー』にも通じるものがあるが、本作には確かに「なにか」が存在している。 ポルターガイストに亡き人の霊。集団ヒステリーにタナトフォビア(死恐怖症)。……オカルトと平常の曖昧な境界には確かに説明しがたい事象が転がっている。

22/4/15(金)

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