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渡辺 祥子
映画評論家
スープとイデオロギー
22/6/11(土)
ユーロスペース
「スープ」を見に行き、「イデオロギー」を語るドキュメンタリーを観ることになった⁉ スープ作りはおまけ、とはいえ、ここには監督の母への思いが温かく漂う。1948年4月3日に済州島での武装蜂起と鎮圧の過程で3万人もの島人が犠牲になった“4・3”事件を振り返る。ヤン・ヨンヒ監督の当時15歳の母(オモニ)は、老いてアルツハイマーになったいま、何も語らないままだ。そのオモニがまだ元気だった頃、娘の夫になる人を大喜びで迎えてスープを作った。鍋に水を張り、内臓を除いた鶏の腹に大量のニンニク、朝鮮人参、ナツメを幾つか詰め込み、長時間煮込んだスープ。そう、参鶏湯。食べ物のシーンはイデオロギーより心に残る、と思わずしみじみ。
22/4/28(木)