19歳の大学生と、10歳の少女という禁断の愛のありようをストレートに描いていて、あまりにもセンセーショナル。しかし圧倒的な感動がある。逮捕された大学生は「ロリコンの誘拐犯」というレッテルを貼られ、少女もやはり「傷物にされたかわいそうな子ども」というレッテルを貼られる。
このようなレッテル貼りはいまもツイッターやブログなどのインターネットでさかんに目にする現象で、そういう印象をもとに他者を誹謗中傷する人たちがたくさんいる。しかしそのような勝手なレッテル貼りに決定的に欠けているのは“当事者性”である。「凶悪な加害者とかわいそうな被害者」とレッテル貼りされた本人たちは、自分たちをどのように捉えているのか?
その視点を、事件から15年が過ぎて30代と20代になった主人公ふたりの出会いとそこに生まれる思いから、ていねいにていねいに積み上げていっている。一見すると酷い事件にしか思えないケースも、その裏側にはもっと複雑で言葉にはなりにくい感情や関係性があるということが描かれていく。決して拙速で乱暴な展開にせず、この“積み重ね”をきちんとていねいに行ったことによって本作はたいへんな傑作となったのだと思う。