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水先案内人のおすすめ

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TVプロデューサーが選んだ注目作

波多野 健

TVプロデューサー、ディレクター

大河への道

今最もチケットがとれない落語家と言われている立川志の輔さんの創作落語の映画化である。今から200年前の江戸時代に驚くべき精度で日本地図を作った伊能忠敬(いのうただたか)、彼を輩出した千葉県香取市につとめる職員がその人生を大河ドラマにしようと悪戦苦闘するというのがおおまかなストーリーで、現代ブロックと江戸ブロックが巧みに組み合わされて進行していく。この映画をやろうと志の輔さんを口説いたのが中井貴一さんで、最初は裏方にまわるつもりだったらしいが、みごとに主役をつとめている。現代ブロックはコメディタッチで江戸時代ブロックはシリアスに。どちらも素晴らしい。本当にこの人はうまいなと改めて感じた。特にコメディタッチで笑わせた後にシリアスな江戸時代に入った時の存在感がすごい。もうひとり、久しぶりにいいなと思ったのが橋爪功さん。ちょっと気難しい脚本家の役が見事。ここのところ、(本当はすごくうまいのに)ちょっと輝きが……、と思っていたのだがこの映画では本来の彼のよさが実によく出ている。そして、出番は少ないが草刈正雄さんもよかった。僕はこの落語バージョンはもう何回も見ていて、その都度感動して泣いていたのだが、だいたい原作の本などで感動してから映画を観るとほとんどががっかり、というパターンなので警戒しながら観たら、この草刈さんのシーンで号泣してしまった。声がいいね。原作の落語では現代ブロックが長いのだがこの映画は江戸時代ブロックの方が長くなっていて、脚本もよくできていた。かなり、お薦めです。

22/5/18(水)

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