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水先案内人のおすすめ

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政治からアイドルまで…切り口が独創的

中川 右介

作家、編集者

トップガン マーヴェリック

映画の中で、トム・クルーズ演じる教官は、訓練生に「考えるな」と言う。超音速の戦闘機での戦いでは、考えていたらやられてしまうのだ。考える前に身体が反応しなければならない。そういえば、『スター・ウォーズ』でもフォースを身につけるには「考えてはいけない」と教えられていた。 「考えるな」はその後も台詞として出てくるが、この映画を楽しむにも、「考えるな」という鑑賞態度が必要だ。 コロナ禍で公開が何度も延期されている間に、ロシアとウクライナの事実上の戦争が始まったなかでの、アメリカ海軍大活躍の映画の公開となった。 現実の戦争や、ロシア以外の国の脅威といったことを考えながら観ると、トム・クルーズが命じられる、実現不可能と思えるミッションそのものが、「気持ちは分かるけど、アメリカの正規軍として、そんなことやっていいの」と疑問に思える。ミッションの過程でのアクシデントと、それをどう乗り越えていくかという展開も、ツッコミだすとキリがない。 だが、そんなことをいちいち考えていたら前へ進めない。ひたすら映像と音楽に身を任せるしかない。 軍隊映画でアクション映画でありながら、圧倒的に美しい映像とそれにフィットした音楽。まるでミュージックビデオなのは、前作と同じ。というより、1986年の前作の後に作られたミュージックビデオの大半が、『トップガン』から何らかの影響を受けていたものだと思い出す。いまでは珍しくもないかもしれないが、当時は愕然とする「新しい音楽映像」だったのだ。 冒頭の「1963年……」というトップガンの説明から始まる数分は、映像のトーンも音楽も前作そのまま。続編というよりリメイクという感じ。ストーリーも前作を知っている人には懐かしさを提供し、観ていない人も置いていかれることなく楽しめるようになっている。 トム・クルーズの「変わらなさ」とともに、36年間の「時」を忘れた。

22/5/16(月)

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