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春日 太一
映画史・時代劇研究家
機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島
22/6/3(金)
丸の内ピカデリー
とても優れた反戦映画であり、また優れたチャンバラ映画でもある。 『機動戦士ガンダム』テレビシリーズ版では一話分だったエピソードを少し設定を変えた上で、大きく膨らませた一本だ。 ガンダムに搭乗する主人公のアムロは、北大西洋上の孤島で敵機のザクと遭遇しガンダムを喪失。そのザクに搭乗するククルス・ドアンは実は軍を離れ、島で戦災孤児たちを育てていた。 ドアンや孤児たちとアムロの交流を軸に物語は展開。争うことを避け、助け合うことの大事さを説くドアンの想いが、ほのぼのとしたタッチと見事に溶け合い、反戦のメッセージが温かく伝わってくる。 その一方で、アクションはド派手だ。ドアンを制裁しに来るザク部隊とドアンやアムロとの戦いは、剣や斧を使っての大チャンバラ。残心の見栄や大きく振りかぶっての斬り合いは、かつての“古き良き時代劇”そのもの。ガンダムが戦線に加わる際の、「よ、待ってました!」と思わず声かけしたくなるようなケレン味たっぷりの登場シーンもあいまって、大衆演劇のような楽しさに満ちている。 安彦良和監督がやりたいことを全て盛り込んだかのような世界。隅々まで心地よい。
22/5/30(月)