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水先案内人のおすすめ

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夏目 深雪

著述・編集業

冬薔薇

阪本順治監督の新作。コンスタントに新作を発表する阪本監督だが、久々に初期の傑作『トカレフ』を観た時のような心地よい衝撃を味わった。「伊藤健太郎で撮りませんか」というオファーがきっかけだったという今作。伊藤は20年10月に車を運転中にバイクと衝突事故を起こし、その場を立ち去ったことで逮捕された(結果的には不起訴)。阪本監督は事故のことも含め本人に取材をし、その時の印象を基にプロットを組み立てたそう。 阪本監督は『顔』『KT』『闇の子供たち』など、事実を基にした傑作も多い。伊藤演じる淳が伊藤本人に似たところがあるかは分からないが、闇も含めて一人の若者を立体的に描きその葛藤は胸に迫ってきて、恐ろしいほど。淳の父に小林薫、母に余貴美子、淳とつるんでいる悪い仲間に永山絢斗、毎熊克哉、淳の父の舟に乗る船員たちに伊武雅刀、石橋蓮司と脇も豪華。清廉潔白に見えた人間の闇が発覚したりと、脇まで丁寧に一人の人間として描き、群像劇としての面白さと解像度は群を抜いている。 オールロケだという横須賀と、淳の父が船長であるガット船の風景も胸に沁みる。

22/5/26(木)

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