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平辻 哲也

映画ジャーナリスト

冬薔薇

筆者は薔薇の愛好家でもある。阪本順治監督が、薔薇をテーマにどんな作品を作ったのか、と期待したら、そうではなかった(笑)。読み方は「ふゆそうび」。薔薇のハイシーズンは5、6月で、二季咲きでは秋にも咲くが、冬に咲くことはほとんどない。冬は枝を落とし、エネルギーを蓄える時期なのだ。 本作は、阪本監督が、事件によって謹慎していた伊藤健太郎のために用意した復帰作と聞く。しかし、伊藤はこんないい男なんですよ、という話にはしていない。そこが面白い。 主人公は自分で望んだ専門学校にも行かず、不良仲間とつるむハンパもの。さらに周囲である事件が起こって……。 監督はむしろ主人公の弱さ、ダメさをむき出しにする。主人公の背景には、幼少期に起こった不幸な事故があるが、擁護はしない。現在の主人公があるのは、自分のせいだ、となじるようだ。 ラストも衝撃的だが、全編にはそこはかとなく、「伊藤よ、冬に咲く薔薇となれ、精いっぱい花を咲かせろ」とのエールも感じる。伊藤もその思いに応え、いままでないキャラクターを見せている。

22/5/31(火)

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