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水先案内人のおすすめ

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TVプロデューサーが選んだ注目作

波多野 健

TVプロデューサー、ディレクター

ボイリング・ポイント/沸騰

“長回し”というのは映像作家が目指したがるひとつの手法だが、えてしてそのために照明やカメラアングル、役者の生理などいくつかの犠牲をともなうものである。過去にはヒッチコックが“一見”すべてワンカットという『ロープ』を作ったが、実は当時はフィルムが10数分しか持たなかったため、途中で物をシャッターしたりして継ぎ目をごまかしている。完全に全編ワンカット(112分!)というので成功しているのは三谷幸喜脚本・演出のWOWOW『short cut』くらいしか見たことがない(これは中井貴一&鈴木京香という優れたふたりの俳優でなければ成り立たなかった)。この『ボイリング・ポイント』は90分一度もカメラが止まらないワンカットに挑戦している。そして見事に、ある有名レストランの厨房から店内においての人々のドラマを作り出している。ちょっとラッセル・クロウに似た主人公(スティーヴン・グレアム)が崖っぷちのオーナーシェフを演じ、彼のまわりの従業員たちが個性的でひとりひとりが活きている。出演者みんなうまい! 特にスー・シェフ役のヴィネット・ロビンソンがよかった。90分の舞台を見ているようなものだが、これを実質2日(コロナで以降の撮影ができなくなった!)で撮りきった現場はすごい。全編ワンカットということだけでなく、内容的にもすごく良くできていて、なかなか、お薦めです。

22/6/6(月)

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