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夏目 深雪
著述・編集業
ベイビー・ブローカー
22/6/24(金)
TOHOシネマズ 日比谷
是枝裕和監督の新作。擬似家族というテーマは『万引き家族』(18)と近いが、『万引き家族』でカンヌのパルム・ドールを獲ったあと『真実』(19)で日仏合作にチャレンジするなど、作品のスケールを大きくしている是枝監督が撮った初めての韓国映画になる。 とはいっても、ペ・ドゥナは『空気人形』(09)で起用しているし、ソン・ガンホも何故か昔から是枝映画に出ていたような親和性を醸し出している。ソン・ガンホ、IUことイ・ジウン、カン・ドンウォン、そしてペ・ドゥナと、各役者の持つイメージと役柄が絶妙にマッチ。韓国人俳優を日本人監督が演出することによる若干の違和感を、寓話的なものに消化し、国境を越えた人間の普遍的な問題を炙り出す手つきはさすがである。 特に『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17)のような、決して当初は意識や志が高いわけでもない小市民的中年男性を演じたソン・ガンホが、『タクシー運転手』でソン・ガンホを助けるために散っていった他のタクシー運転手のようになる終盤が泣かせる。正義感の強い女性を演じさせると右に出るものがいないペ・ドゥナが命と倫理、家族の絆とはという難しい問題の手綱を引っ張っていく展開も韓国映画ファンなら拍手喝采だろう。
22/6/14(火)