評論家や専門家等、エンタメの目利き&ツウが
いまみるべき1本を毎日お届け!
演劇鑑賞年300本の目利き
大島 幸久
演劇ジャーナリスト
『室温~夜の音楽~』【配信あり】
22/6/25(土)~22/7/24(日)
世田谷パブリックシアター、兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール、 その他生配信
主演が今を時めく俳優古川雄輝(34) と書き出すのが『室温〜夜の音楽〜』の場合は最適かも知れない。 ケラリーノ・サンドロヴィッチ (ケラ) の作、河原雅彦の演出。演劇作品の紹介はこの順番が一般的なのだから。 作・演出でケラが送り出したのが2001年。第5回鶴屋南北戯曲賞を受賞した (実は私も選考委員の一人でした) ホラー・コメディの秀作だった。 あれから21年。 今回は河原による新演出、音楽を「在日ファンク」が生演奏するスタイル。 そして出演陣は一。 その前に物語。その日は、12年前に殺害されたホラー作家海老沢十三の双子の娘、妹サオリの命日。 海老沢はもう一人の娘キオリと田舎で二人暮らしをしている。 サオリは拉致・監禁の末、集団暴行を受けて殺されたのだが、加害者の一人の青年・間宮が焼香したいと訪ねてきた。古川がその間宮の役。 180センチと長身、英語はペラペラ、ドラマ『イタズラなKiss』が大ブレークして中国では超人気者らしい古川。 アイドルのようだが、実は舞台経験は多いから、演劇界の手練であるケラ、 河原から声が掛かったのだろう。 共演者には海老沢が堀部圭亮、キオリが平野綾、警察官が坪倉由幸、海老沢のファンという女が長井短、タクシー運転手が浜野謙太の6人芝居だ。 ケラの世界は一筋縄ではいかない。 善も悪も、虚構と現実も境目が不透明になっていく。 ケラの投げつける中毒性、魔術がまた立ち上がる。
22/6/19(日)