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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

わたしは最悪。

第94回アカデミー賞で『ドライブ・マイ・カー』と国際長編映画賞と脚本賞を競ったヨアキム・トリアーのオリジナル脚本による映画。カンヌ国際映画祭で女優賞(レナーテ・レインスヴェ)を受賞したのは納得の作家性が光る一本。 男女平等を願う社会の中で、男性監督のヨアキム・トリアーがひとりの女性の仕事を通しての自分探しに着目し、家庭に収まるのではなく仕事で成功することや、性への解放を描いた脚本は、節々に「人生の主人公になる日」を夢見る人間の本質を描いていた。 結婚とはなんなのか。人生を輝かせることは自分勝手なことなのか。子供を持つことが人生の幸せなのか。性別問わず誰にでも当てはまる、自分らしく生きようとする中で誰かと生きることで生じる摩擦。 秀逸なセリフの数々と、恋した時の視覚を表現したロマンチシズム溢れる映像。男性主人公であれば当たり前に思える物語も、女性に置き換えることで彼女が奔放に見えるのならば、それはきっと密やかな偏見。そんなことにも気づかされる面白くてセンチメンタルな秀作に酔いしれて。

22/6/30(木)

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