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Tak

美術ブロガー

津田青楓 図案と、時代と、

津田青楓(つだ・せいふう/1880-1978)の名前は知らなくても、彼が手掛けた「図案」は必ずどこかで目にしているはずです。京都に生まれた青楓は、はじめ日本画を学んだ後、浅井忠に師事し洋画も会得しました。京都髙島屋の図案部に勤め、1903年には図案集『うづら衣』を刊行します。明治40(1907)年に農商務省海外実業練習生として安井曾太郎と共にパリに留学し、アカデミー・ジュリアンで、本格的に絵画(洋画)を学びました。帰国後は、官展のような絵画の展覧会向けの絵画ではなく、生活を彩る「小芸術」(マイナーアート)へ関心を示しこれまでになかった「図案」を世に送り出しました。 さて、明治から大正、昭和時代と目まぐるしく変化する社会の中で、日本画、洋画、工芸、書、図案など幅広い分野で活躍した津田青楓ですが、広く一般に知られている作品がどういったフォーマットなのかお分かりになりましたでしょうか。最も有名なのは夏目漱石の小説『道草』『明暗』等の装幀つまりデザインです。多方面でマルチな活躍を見せつつ、時代の流れを取り入れた青楓の「図案」は、急進的に西洋化を急ぐ当時の日本にあって非常に新鮮なものでした。そしてその新しさは時代が令和になった今でも変わることがありません。 会場には大正時代に手掛けた本の装幀、刺繍など、明治から大正時代に至るまでの図案の仕事だけでなく、日本画と洋画もあわせて展示されています。伝統を重んじる京都に生まれ育った青楓がいかにして、斬新な図案の数々を世に放ていったのかを肌で感じることのできる展覧会です。 「津田にとつては、かきたい時にかきたい事をかきたい様にかいてゐさへすれば、それが日本画になつてゐやうが西洋画になつてゐやうが、画になつてゐやうが図案になつてゐやうが、そんな事はどうでも可い事なのである。」 小宮豊隆「序」津田青楓『装幀図案集 第一輯』芸艸堂、大正4(1929)年

22/7/17(日)

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