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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

こちらあみ子

人と違うとはなんなのだろう? 感情のままに生きるあみ子を同級生たちが失笑しても、あみ子はずっとひとりの男の子だけを見つめている。それと同じようにあみ子は尾野真千子演じる母親のホクロから目が離せない。そんなふうにただ純度が高いだけで、時に母親は傷ついてしまい、時に大好きな男の子にまで怒りをぶつけられる。カメラはあみ子の速度で子供たちの歩みを映し出し、そっと覗き込むようにあみ子の行動を捉える。 自分の尺度で物事を見ているだけなのに、人はそれを許さない。我が子なのだから寛容になれと言われても、自分がもし親だったらどうするのだろう。そこを見事に体現しているのが、井浦新演じる父親の言葉少ななやや疲れた背中だった。 あみ子の脳内は多くのものを映し出し、小さな音が彼女の想像力を無限大にまで膨らせ、時には見えないはずの人々も姿を現すのだから、彼女にはアーティスティックな才能が潜んでいるのかもしれない。 なにより大沢一菜という名優をオーディションで見つけ出した森井勇佑監督の優しい眼差しがスクリーンに映し出され、ラストカットで観客はあみ子を抱きしめたくなるだろう。少なくとも私はそうだった。

22/7/4(月)

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