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ホラー、動物モノ、トンデモ映画を発掘

春錵 かつら

映画ライタ―

X エックス

田舎町にポツンとある一軒家。そこを中心に牛舎や離れからも数々の惨殺死体が見つかり、その凄惨な現場検証に警察は戦々恐々としていた。一体その家で何が起きたのか?物語はここから始まる。 ホラー界では1970~80年代が相変わらず人気だが、本作も1979年のアメリカが舞台で、ポルノ映画の撮影に訪れた若者6人が巻き込まれる恐怖を描く。『スイス・アーミーマン』『ミッドサマー』などなどクセの強い作品を連発するA24制作で、実はA24が初めて手掛ける3部作の第1弾だが、本作も漏れなく「ザ・A24」といった趣、やはりタダのエログロホラーではない。 一見、モラルの低い若者たちが酷い目に遭うという“いかにも”な80年代ホラー王道の皮を被りながら、時代やカルチャー、アイデンティティといった複雑な要素が絡み合っていることが垣間見え、ライトにもディープにも楽しめるようになっている。 セクシーカット、飛び散る血しぶき、行き交う悲鳴の向こうに映し出されるのは、老いと若さ、自由と抑圧、敬虔と不敬、欲望とモラル、生と死……相反する感情たちの衝突の喜悲劇だ。凄惨な事件現場を24時間前から紐解くうちに、観客は一人ひとりの人間の中に在る相反するものが一斉に奔出する機会の目撃者となってしまうのだ。やっぱり人間が一番怖い!! かつて存分に楽しんだ数々の80年代ホラー映画の犠牲者にも、きっとそれぞれ複雑な背景があったのかもしれない。これまで観たホラー映画の死屍累々に、一抹の罪悪感さえ抱く……そんなドラマを、本作は登場人物たちに与えた。

22/7/4(月)

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