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イヤな映画、主人公の悲劇がお好み

真魚 八重子

映画評論家

夜明けの夫婦

山内ケンジ監督による、ある二世帯家族の物語。孫が欲しい祖母と嫁の若さに惹かれる舅。セックスレスで悩む嫁、そしてその夫は仕事が忙しいうえ、子作りを迫られてEDになっている。全員の欲望がごく自然で当たり前のものであり、また望んでもどうにもならない事情もあって、追い詰められていく心境もわかるだけにつらい。こういった家族劇が少しユーモラスに、でも極々身内の人間を十分に追い詰める言葉の応酬によって描かれる。嫁は韓国人の設定で、同郷の女友達と韓国語で話すときの唯一心を開ける親し気な様子が、胸にキュッときてしまう。映画らしく妄想や架空の出来事が、現実に侵食してきて影響を及ぼすような自由な演出もあり、非常に豊かな創作になっている。

22/7/23(土)

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