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夏目 深雪
著述・編集業
アプローズ、アプローズ!囚人たちの大舞台
22/7/29(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町
囚人たちの演技のワークショップに招かれた売れない俳優のエチエンヌ。一癖も二癖もある囚人たちに演技を教えているうちに、不条理劇『ゴドーを待ちながら』を劇場で一回限りの上演をすることを思いつく。様々な困難を乗り越えた上演が思いがけず好評で、ツアーで各地を回るまでになるが……。 エチエンヌを演じたカド・メラッドがとにかくサイコーである。エキセントリックで含蓄深い彼の資質が、エチエンヌに当て書きであるかのようにぴったり嵌っている。通常の感動もののようなカタルシスを期待すると肩透かしを食うのだが、なんともいえない余韻が残る。それは、彼を始めとし、囚人たちも様々な個性の俳優に演じられることによって、実在するかのようなリアリティを持っているからだろう。ユーモアに満ち、スリリングで、鑑賞後それぞれが様々なことを持ち帰れる映画であろう。おススメ!
22/7/14(木)