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水先案内人のおすすめ

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映画から自分の心を探る学びを

伊藤 さとり

映画パーソナリティ(評論・心理カウンセラー)

愛ちゃん物語

アーティストという言葉が似合う大野キャンディス真奈監督のセンサーが至る所で輝いている。それは絵画制作を行う監督ならではのビビッドな色合いと楽しさを増す構図が映画に反映され、幼稚園でワークショップを行う監督の経験からか、愛ちゃんの通う高校も幼稚園にさえ感じ、高校生という設定のクラスメイトの男子が子供にさえ思える荒唐無稽なアプローチが面白いからだ。しかも主人公の愛ちゃんは登場するや否や、カメラ目線で語りかけてくるわ、ミュージカルが始まるかのように突如、歌い出すのだから物語の行く末は見当もつかない。 そこからトランスジェンダーの聖子さんと出会い、彼女から「好きを楽しむ」ことを学び、好きを身にまとう喜びを知り、聖子さんの家で『チャイルド・プレイ』や『E.T.』『ドラえもん』を一緒に体験することで感情も膨らむことを知る愛ちゃん。 まだ20代の監督だが80年代、90年代の映画が大好きだからとのこと。演出には遊び心があり、年齢も家族も型にはめる必要などないと言わんばかりの自由な発想がスクリーンの中を所狭しと駆け回り、観客の心をピュアな色に変化させてしまうのだ。 2年の歳月を経て完成した大野キャンディス真奈初の長編監督作である本作が、ぴあフィルムフェスティバルではエンタテインメント賞と映画ファン賞のW受賞、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞というのも納得。「多様性を大事にしている」という作品作りは、どこを切り取っても作家性に優れていて愛に溢れている映画だった。

22/7/26(火)

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