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映画のうんちく、バックボーンにも着目

植草 信和

フリー編集者(元キネマ旬報編集長)

プアン/友だちと呼ばせて

20数分間におよぶカンニング・シーンが圧巻だったあの『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』のバズ・プーンピリヤ監督と、男同士の性愛描写が官能的だった最初期のLGBT映画といえるあの『ブエノスアイレス』のウォン・カーウァイ監督がコンビを組んだ作品、といえば興味をかき立てられる映画ファンは少なくないだろう。 余命宣告を受けた青年とその親友の旅を描いたロードムービー『プアン/友だちと呼ばせて』がその新作。舞台はNYとバンコク。NYとアジアが舞台といえば、古い映画ファンは、アン・リー監督の『推手』や『ウェディング・バンケット』を思い出すかもしれない。アジアとアメリカ、父と子の異なる価値観が調和を見いだしていく優しき人間ドラマだった。だが『プアン/友だちと呼ばせて』で描かれる〈友情と訣別〉の物語は、もっと現実的で厳しく、哀しく、切ない。 NYでバーを経営する青年ボス(トー・タナポップ)のもとに、ガンで余命宣告を受けたバンコクで暮らす友人のウード(アイス・ナッタラット)から電話が入るところから物語は始まる。そして主人公の運命を書き換える〈秘密〉が明かされる終章は……。 人生の象徴である数々のカクテル、カーステレオから流れる曲が、嫉妬、愛憎、羨望に苦しむ若かりし頃の苦い記憶をよみがえらせていく。果たして二人の間に横たわる〈秘密〉とは何か? カーウァイ64歳、プーンピリヤ41歳。カーウァイがプーンピリヤの才能に惚れてプロデュースしたそうだが、父と息子のような歳の差を軽々と越えて才能をぶつけあったことが実感できるロードムービーの佳作だ。

22/7/27(水)

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