本年2月のウクライナへのロシア軍侵攻に先立つ7年ほど前に撮影されたドキュメンタリーだ。ロシアを悪、ウクライナを善とする感情的な見方を超えて、ウクライナに暮らす人々の心情にくすぶる親欧米派と親ロシア派の対立が見えてくる。そんな対立が2013年に汚職を批判された親ロシア派の大統領が国外に逃亡したことから激化し、ロシアによるクリミア半島併合と東部の親ロシア派による共和国独立につながり、ついにロシア軍侵攻となる。映画はスロバキア出身で写真家の監督が双方の支配下の地域に暮らす住民たちの取材と彼らの生の声を中心に描かれるが、どちらの住民も平和に暮らしたいという願いは同じ。そんな願いを、政治の延長たる戦争が敵・味方に分断する不条理さは何ともやるせない。

22/8/5(金)