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古今東西、興味のおもむくままに

藤原えりみ

美術ジャーナリスト

蜷川実花「瞬く光の庭」

コロナ禍で国外への移動が制限されるなか、日本各地の庭園や植物園をめぐり「何かに憑かれたようにシャッターを押し続けた」と蜷川実花。昨年から今年にかけて四季折々の植物の姿をとらえた写真は4万枚にのぼるという。今回展示されているのはそのなかから厳選された80数点。   アール・デコ様式の本館では、大きく伸ばしたした写真パネルを暖炉の上に立てかけるなど、各部屋のインテリアと呼応し合う展示の工夫に目を見張る。 蜷川作品の植物たちが暖炉や壁面に施された植物文様にそっと寄り添い、建物が竣工された1933年から今にいたる89年に及ぶ時空を超える対話に耳を傾けるような気持ちになる。大客室や大食堂では窓ガラスに掛けられた写真作品が緑豊かな庭園の木々と響き合い、二階のベランダでは、大きなガラス窓を覆う透明シートにプリントされた彩り鮮やかな花々が自然光によってめくるめくステンドグラスのような効果を生む。二階広間や浴室には写真とネオンを組み合わせた発光する作品も。   これらの斬新な展示の試みは窓ガラスや窓枠、照明器具や壁面のテクスチャー、内装の装飾の細部等々に観客の目を導いていく。本館の斬新な空間体験を反芻しつつ新館に向かうと、そこに現れたのは、これまた未体験空間ゾーンだった。   それぞれに異なる微妙な角度で天井から吊り下げられた縦2.5m&横5mの巨大な5枚の紗幕スクリーンに花々や植物の写真や動画が次々と投影され、一番奥の壁面には縦2.5m&横9mのLEDによる光り輝く15分13秒の映像が展開。スクリーンの間を動き回る観客のシルエットもまた作品空間の一部となる......。今まで体験したことのない映像インスタレーション空間に唖然とすること暫し。本館も新館も「今、ここでしか出会えない」空間体験を提供してくれる。 さらに、プロジェクションとLEDパネルを用いた立方体映像小部屋が展示されている『花、瞬く光』展@小山登美夫ギャラリー六本木も開催中(2022年7月16日〜8月13日)。立方体の5面に移り変わる映像と音楽が流れ、コロナ禍や政治家とカルト宗教の根深いつながり、ロシアとウクライナなどなど、この世に溢れかえる憂さからしばし身も心も解放される時間を過ごすことができるだろう。 寝転んでも良いそうなのだが、靴を脱ぐのをお忘れになりませぬように(床面はLEDパネルなので)。

22/8/20(土)

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